昨年3月11日のメモリアルコンサートをはじめ、ここパリでも素晴らしい演奏を聴かせてくださいましたスーパーキッズ・オーケストラのメンバーで三重・高田高1年の伊藤江理華さんが、全国の高校生・高専生を対象とし「再生」を課題テーマにした東北大文学部が主催する文学賞「第6回青春のエッセー 阿部次郎記念賞」で最優秀賞に選ばれました。
被災地に寄り添う思い、そして音楽の役割を真摯に見つめた文章を紹介させていただきます。
掲載をご快諾くださいました伊藤江理華さん、ならびにスーパーキッズ・オーケストラが所属する兵庫県立芸術文化センター プロデューサーの横守稔久さんに改めて御礼申し上げます。
昨年の夏、私たちは仙台空港に到着した。私はずっと不安だった。行きたい、行かなくては、と思う気持ちがどこかにある一方で、行ってどうなるのか、と不安で仕方なかったことを覚えている。いつもにぎやかなオーケストラの仲間は、みんな静かだった。急に決まった訪問に送り出すメンバーの親たちの中には賛否があった。ギリギリまで日程が決まらず、情報不足が不安をあおった。簡易風呂のイメージはわかない。ペットボトルに水を何本持っていくか、そんなメールが何往復もした。報道でしか知らない震災後の東北、それはまるで未知の世界に無防備で行くようなものだった。
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