猛暑となった6月最後の日曜日、パリから約35Kmの小さな街 Lagny-sur-MarneのAuditorium du Pôle Musiqueにて、Nicolas Horvathさんによるチャリティーコンサートが開かれました。
演目はエリック・サティの『ヴェクサシオン』(Vexations)。
このピアノ曲は52拍の旋律を840回も繰り返す構成になっており、演奏には約10〜24時間を要します。
通常は数人のピアニストが交代で演奏するこの作品を、Nicolas Horvathさんは独りで黙々と、観客が一人も居ない時間帯でさえも休むことなくひたすらに弾き続けます。
840回の繰り返しを正確に数えるために、Nicolasさんは840枚の楽譜を用意し、繰り返すごとに1枚ずつ床に落としていきます。時間の経過と共にやがて大量の楽譜が床に積もりました。
会場の都合もありやや速めのテンポで弾かれたため演奏は予定より早く、10時間弱で終了しました。
その後丁寧な楽曲解説と質疑応答があり、更にまだ後から来場される方々もいらしたので、サティ2曲とショパン、スクリャービン2曲を弾いてくださいました。
どうしてこのように過酷なチャリティーコンサートを日本のためにしてくださるのですか?とお訊きしたところ、日本人女性の伴侶を持つNicolasさんが被災者の負った消えない傷、日常的な「痛み」ということに強いこだわりを持って臨まれていることが感じられました。チャリティーにも様々な表現、姿勢があることを改めて認識させられる、非常に印象的な1日でした。
今回のコンサートでは147ユーロの募金が集まりました。全額在仏日本大使館を通じ日本赤十字社へ寄付されます。
このチャリティーコンサートを企画し実行してくださったNicolas Horvathさん、会場にお越しくださいましたLagny市の皆様に心から御礼申し上げます。